神経症のロゴセラピー 7 勝田茅生著 より
ヴィクトル・フランクル(「夜と霧」の著者)の考えによると、
心理的にしっかりしていて健康な人間はもともと幸運を追い求めず、意味を追い求めるというのです。何か素晴らしいこと、自分で打ち立てた目標や仕事、愛する人間などに全力で向かっていく時に、人は自分の存在に意味があると感じられ、人生を生きるに値すると感ずることができるのです。
「 私はアルコール依存症患者です。けれども一年前から禁酒状態で生活しています。依存とどう対決するか、そのきっかけは私の試みたいろいろなセラピーから来たのではありません。そうではなくて、私の人生から出て来たのです。私の過度のアルコール依存が原因で家を出た妻が病気で倒れたのです。それで私は仕事を失いたくありませんでした。妻と娘を支えたかったのです。私は飲酒を止めました。セラピストたちはいつも私が多少「エゴイズム」の傾向があると主張いたいようでしたが、私はそれをどう考えたらよいのでしょうか?私が一体何のためにアルコールを諦めるべきだ、というのでしょうか?そして私はエゴイズムに支配されている?私は自分の弱さのためにいずれにしても自己嫌悪に陥っていたのです。でも妻が病気になって、突然自分が健康にならなくてはいけないという意味を知ったのです。これが今日に至るまで私に力を与えてくれています。こうして今まで自分が犯した罪の借りを少しずつ返すことができるのです。私は違った人間になったのです。」
フランクルのロゴセラピーが依存症予防において適用される
3つの「援助パッケージ」
1.人生の意味を発見するように助ける
2.意味のある決断を下せるように助ける
3.意味のある決断を貫けるように助ける
ロゴセラピー3本の柱
人間観; 自由の意思 人間学
治療論; 意味への意思 心理療法
世界観; 人生の意味 哲学
感想;
目的を見出すとその目的のために人は頑張ろうと思います。アルコール中毒の彼はいろいろな心理療法を受けて、アルコールを止めることがありませんでした。妻が亡くなり、子どもを自分が育てないといけない。自分しかいない。大きな人生の目的が見つかったのです。
人は自分のためだけに頑張ろうと思うと、エネルギーが続かない時があります。誰かのために、その人に喜んでもらえるため、あるいは自分しかその人を助けることができないなどの場合には、自ら役割を感じることができ頑張れるエネルギーが続くようです。
神谷美恵子著「生きがい」には、人は誰かのためににあるいは社会に役立っていると実感を持つことができないと生きたいという気持ちを持ちにくいことが書かれています。神谷さんは精神科医として、ハンセン氏病の施設に入所している人の精神面のケア―を担当され、そこから人が生きるには何が必要かを実感されました。