「AV女優」の社会学 鈴木涼美著 ”何故、AV女優になるのか?、何故、続けるのか?”
著者は慶応大学でのレポートと東京大学の修士論文での研究のまとめをこの本にされたそうです。
慶応のある駅周辺ではキャバクラなどの店員やスカウトマンがたむろしていて、キャバクラ体験入店などを経験している内に、
そのような人と親しくなり、AVのプロダクションを紹介して貰い、そこに出入りしている内に、
AV女優やスタッフとも接する機会が増え、このテーマを選んだそうです。
AV出演は裸になればよいと意識して入ってくる人が多いが、
モデルとの意識(見る人に満足を与える)を持つようにと監督は説明するとありました。
このようにAVにはエンターテイメントとしての要素があるため、
セックスをする観点からすれば、ソープランドやデリヘルなどとおなじなのだが、、
ハードなものほど、終わった後の達成感が強くでるそうです。仕事に一生懸命取り組んだからのようです。
一緒に作って行くとの気持ちも大きいようです。
出演する動機は、借金や性に興味があって、また自分から応募してくる人は少ないそうです。
ほとんどかスカウトマンに声をかけられ、お金の魅力もあり、興味もあり、上手い説得で出演に至るそうです。
そこには、他の風俗と一線を隔てるものはなく続いているとの考察でした。
また風俗に行く女性と行かない女性との間にも大きな違いはないとのことでした。
たまたまスカウトマンに声をかけられ説得された人、スカウトマンに声をかけられなかっただけの違いかもしれない。
AV女優は出演して行くことでAV女優として意識が育てられ、そして続けて行くのではないだろうかと考察しています。
面接を受けた後、プロモーション用ツールを撮影するそうです。
その撮影前は出るかどうか迷いが最後まであるそうですが、
ツール撮影後は、撮影時に何人か一緒に撮影することもあり自分だけでないとの意識も働き、迷いが減るそうです。
単体、企画ものの二つがあり、単体(女優は一人で出演)での女優は70〜120万円/1本(1〜2日撮影)、
企画(複数の女優出演)ものだと10〜50万だそうです。
単体に10本ほど(人によって差がでる)出ると、飽きて来られ企画ものに移って行くそうです。
AV女優になった人の心配は、@親ばれ(親や友達などに知られる)、A辞めた後の生活だそうです。
著者がインタビューした11人の内親が知っているのは2人だけでした。
辞めた後に、多くのお金を得ていた生活が元の生活に戻れるかどうかの心配です。
一度、贅沢を味わうと、元に戻すのはとても難しいです。
AV女優の体験がそれだけで終わらずにその後の人生に大きな影響を持つことになります。
AV女優を引退しても映像は制作会社側にあるため、復刻版として出されたりWebにずっと残る場合もあり、
いつ周りに知られるかの不安も抱えながらの人生になります。
日テレ採用で、銀座のクラブのホステス経験はアナウンサーとしての清廉性に問題ありとのことで内定が取り消されました。
この件は、日テレ側が不利とマイナスのイメージを与えると思ってか一転内定取り消し撤回になりました。
銀座のクラブを使っていながらホステスに対して差別的な考えです。
ホステスでさえこのレベルですから、AV女優としてはさらに社会の冷たい視線を意識せざるを得ない状況です。
実際は、AVを見ている人がいるからそのような需要があるわけで、AV女優だけを差別化するのはおかしいのですが。
売春は法的に処罰されますが、ソープランドは見てみぬふりをしています。
性産業は非難/否定しながらも、なくならない、存在続けています。
それは社会に必要との考え方も一方ではあります。
戦争中は女性に兵士の性処理用として部隊に付いて行動していました。
女性にその選択の自由意思があったとしていますが、戦争中のの自由はどのような自由なのかと思います。
制約やそうしなければならない中での自由、そういう社会の中での仕方がない選択だったのではと思います。
AV女優になるのも本人の自由なのですが、そこには周りの甘い誘いの中での、
つまりそのような社会の中での自由のように思えます。
AV女優を経験した人も、その後の人生がその人にとって輝く人生であればと願いながら読み終えました。