本の紹介&感想
「督促OL修行日記」 榎本まみ著 "カード支払い延滞金督促業務”⇒”ストレスで辞めて行く”
新卒で信販会社に入社し支払い延滞顧客への督促を行うコールセンターに配属される。多重債務者や支払い困難顧客から怒鳴られながらお金を回収する日々の中、心を病んで次々と辞めていく同僚を見て一念発起、気弱でヘタレな性格でも言い負かされずに回収できる独自のメソッドを開発。
朝から晩まで、怒鳴られ、脅され、謝る毎日。洗濯の時間もなくて紙パンツ生活。入社半年で10キロ減・・・。こんなストレスフルな仕事でも、ちょっとしたコツで出口は見つかったのです。
・いきなり怒鳴られてピクッと身体が固まってしまったら、その瞬間思いきり足をつねる。もしくは足の小指をもう一方の足で踏んづけるなどして、下半身を刺激する。「痛っ!」と感じると同時に、怒鳴られたショックによる金縛りは解ける。そこからお客様に反撃することができるのだ。
・“凄腕の交渉人−お客様に大変人気があった−“激しい交渉をしていたT田さんの声と口調がガラリと変わった。「色々厳しいことを申し上げましたが、くれぐれもご無理はしないでくださいね。お客様のお体が一番大切ですから・・・では、ご入金をお待ちしています」
・“回収率100%の奇跡の債権?” 先輩が「フフ・・・すごいのよ。こんなに回収率が高い商品は二つとないわ。しかもお客様は絶対に怒鳴らない。まさに『奇跡の債権』なんだから。「で?なんの督促なんですか?」「うん、包茎手術」
督促の電話をすると「俺、○○のカード使ってないけど?」「カードの利用ではなくショッピングというお買い物の分割払いでご利用いただいている分で・・・」「何の費用ですか?」「医療費です」「医療費?俺使ったっけ、そんなの・・・。分かんないけど」。仕方がない、「*月*日、**クリニックでご利用された、包茎手術の医療費です!」。一瞬の沈黙。「あ、ああああ!はいはいわかりました。払います!すぐに払います」。ものすごいいきおいで電話は切れた。その1時間後に入金確認が取れた。
先輩いわく「美容整形とかもそうだけど、人に知られたくないものは回収率がいいのよね」
・「申しわけございません」の謝罪を繰り返していると顧客は逆に怒る場合がある。
「さっきのオペレーターの態度が気に入らない!クビにしろ!」「先ほどの者がお客様に不愉快な思いをさせてしまい、申しわけございません」。このように「具体的な言葉」+「謝罪」を繰り返すことで、「相手の気持ちをわかっている」と示すことができるという。「いいですかN本さん、クレームを言ってくださるお客様は、謝ってほしいと思っているだけじゃなくて、自分の気持ちをわかってほしいかから電話をかけてくるんですよ」と先輩のアドバイス。
・督促修行で。“だめんず”好きに終止符。だめんずにひっかてる時は、周りの友達がどんなに「あんな人やめなよ!」「あの人だめんずじゃない?」と言っても本人はぜんぜん気がつかない。ところが「督促道」を身に付けるにつれ、不思議と長らく曇っていた目から霞が取れ、「あ、この人だめんずだ」とわかyるようになった。ちなみに私が大学時代から長らくひっかかっていたのは、「悪口系だめんず」だった。「お前はだからダメなんだよ」「いいところなんてない」「自分がかわいいと思ってんのか?」。だめんずの彼は会う度に私にこう言った。最初は嫌だなと感じたり、ちゃんと傷ついたりもするんだけれど、そのうち麻痺して慣れてしまい、なんの疑いもなく「私ってダメなんだ」と思うようになる。完全に洗脳状態に陥る。「悪口系だめんず」にひっかかると、女は間違いなく容貌にそれが表れる。うつむいて、おどおどしていつも自信なさそうな表情になってしまう。
・先輩の技を盗む!“ちいさな大発見”。S木先輩の督促の電話。「朝早い時間にお電話して申し訳ございません!」「夜遅い時間、お疲れのところ申しわけございません!」なぜか、みんな一言謝ってから話している。そうか、人間先に謝られるとしまうと、その上さらに怒りにくいのかもしれない。
・“悪口辞典”。「え?お客様のクレームですか?ボクは全然、ストレスなんて感じたことないですね」。彼は常に十数件のクレームを抱えていて、お客様からの罵声を浴びない日はない。時には1本の電話で2〜3時間ひたすら怒鳴り続けられることもある。彼は「実はボク、お客様に言われた悪口をコレクションしているんです。いつか自分だけの『悪口辞典』が作れるといいな〜と思って」。にっこり笑うと、ピンク色のB5サイズのノートを出してきた。その中には、日付と、お客様に言われた悪口や罵詈雑言がぎっしり記録されていた。それを見習って自分もコレクションを始め、それを4コママンガにしてブログに掲載し始めた。
・こちらから支払期限をお願いするよりも、相手に支払うことができる日を言って貰う。そうすると守る確率が高くなる。
・謝るだけでなく、“ありがとうございます”の言葉を2:1位の割合で混ぜると相手の気持ちがよくなる。
・人の「恐怖心」「義務感」「罪悪感」に働きかける。
「恐怖心」なら、「このままだとカードが使えなくなってしまい、今後の生活に大きな支障を来します」など。
コールセンターに配属されたために朝早くから夜遅くまで働いたそうです。一緒に入った同期は9時〜18時で帰っていたので、その待遇があまりにも違っていた。13人入った同期がストレスから転職、精神的な病気で休職していく、コールセンターはただ、”生残っている“だけでも上司に「よくやっているねぇ!」と褒められてしまう状態だったそうです。回収率の成績がダントツで低かったのが、多くの優秀な人が辞めていき、自分も少しずつ成長し、気が付いたら優秀な人になって行った。