本の紹介&感想

「ヒトラーと哲学者」 イヴォンヌ・シェラット著 ”ヒトラーに協力した哲学者”

ヒトラーが600万人とも言われるユダヤ人たちを殺害しました。
そこに至るには、思想的にユダヤ人を迫害する思想を持つ哲学者たちがいた。

カント「ユダヤ人には独立した存在として権利を与えられない」と主張した。
ヨーハン・ゴットリープ・フィヒテ
「私にはユダヤインに公民としての権利を与える方法がまったく見当たらない。
ひょっとして誰かが連中の頭を全部叩き切って、新しいものと取り換えるというのなら別だ。
その中にはユダヤ教的な考えがひとかけらもないような新しい頭だ」
ヘーゲル「他の神々に寛容になれないのが、ユダヤ人だけの民族的な神なのだ。この民族の厳しい神はそれほど嫉妬深い」
ゴットロープ・フレーゲ「ドイツのユダヤ人が『いなくなる、あるいはむしろドイツから消えてくれたらいい』という願望に共感し、それを表明し始める」

協力者
ローゼンベルク「大量虐殺を承認することに結びついていった」
ナチ党の主席人種理論学者と認められた。

アルフレー・ボイムラー「ヒトラーのため、ベルリン大学に政治教育研究所を設立した」
「ドイツ文化による反ユダヤ人闘争同盟」設立。激烈にヒトラーを支持する側に立った。
ローゼンベルクの右腕 大学ナチ化の中心的存在へ。ベルリン大学の哲学教授に。
エルンスト・クリーク「ユダヤ人が信仰生活に及ぼしている影響を根絶すること」
ローゼンベルク第二の腹心。

ヒトラーが権力を掌握した後の1年間でドイツ全土の何百、何千ものユダヤ系学者が職場を追われた。

ヒトラーを支えた方哲学者 カール・シュミット ベルリン大学教授
「私は、アドルフ・ヒトラー総統が『我が闘争』の中でユダヤ人問題について書かれたすべての言葉、とりわけユダヤ的弁証法に関する総統の所説がもっとも読まれるべきとを、声を大にして叫びたい」

ヒトラーの超人 マルチィン・ハイデガー
「ヒトラーを理想的なものとして描き、ヒトラーを礼賛した」
ヒトラーが首相に選出されてから直ぐに、ハイデガーはフライブルク大学の総長になることを承認された。
ユダヤ人を迫害するヒトラーを支援している一方、ユダヤ人の学生だった少女を愛人としていた。

ヒトラーの対抗者
悲劇 ヴァルター・ベンヤミン
「ナチ哲学者に懸念を言葉にした」
ゲシュタポが部屋に踏み込んで来て、ついに毒を「自己解放」の秘薬をあおり亡くなった。

殉教者 クルト・フーバー
学生たちに行動を起こすビラを撒いた。
女子学生諸君! 男子学生諸君! われわれにとって、合言葉はただ一つ。
党と戦え! われわれになおも政治的発言を禁じて、黙させようとする党組織を離脱せよ!
捕えられて処刑された。

戦後、ヒトラーに協力した哲学者は“同調者“という責任が低い位置づけになり、何年かの刑務所の後、自由になった。

感想;
哲学者たちも、権力にすり寄る人、自分の信念を貫く人、さまざまでした。
自分の信念を貫く人はいのちを失うリスクもありました。

ユダヤ人を迫害する思想の理由をヒトラーに与えたり、積極的にヒトラーに協力して迫害を結果的に支援してしまいました。

ヒトラーを産んだ当時の社会情勢、特に高い若者の失業率が社会不安を引き起こしました。
ドイツ人もまさかヒトラーが戦争に走り、ユダヤ人たちを600万人に殺すとは想像だにしなかったと思います。
気が付いた時には、止めることができなくなり、止めようと発言すると殺害されるようになっていました。
ドイツではその反省を自ら行っているそうです。


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