本の紹介&感想
「あの失敗から何を学ぶか失敗学事件簿」 畑村洋太郎著
2004年10月23日中越地震による新幹線脱線事故
新聞では「新幹線の安全神話が崩壊した」と報道されたが、これは「大成功」だったのである。
JR東は阪神・淡路大震災の後に基準を見直しして、活断層に近接する地域の高架で補修が必要な橋桁3000本について1997年までに工事を完了していた。
ところが2003年7月の宮城地震でこの補修地域から漏れていた東北新幹線の橋桁約30本にひび割れなどの損傷が見つかった。
そこでJR東は東北新幹線と上越新幹線の橋桁、あわせて約8万2千本の内、五分の一にあたる1万5千本あまりの補修工事に取り掛かった。
実は新幹線が脱線したのは、まさに補修を終えた橋桁の上であった。これは決して偶然でない。
JR東は地盤が弱い地域を調査し、そこから優先順位をつけて補修工事を始めていた。幸運な要素もった。
線路が直線であり、高架んおでレール脇が砂利ではなくコンクリート上を2km走ってから停止した。
台車の部品と車輪との隙間に上手くレールがはまったまま走ったので車両の転覆が逃れた。
しかし、単に「幸運が重なった」と片づけるのは間違っている。やるべきことをやっていなければ、幸運の女神は決して微笑まなかった。
上越新幹線事故は「大成功」、JR福知山線脱線事故は「大失敗」、JR羽越線脱線事故(強い突風)は「未知の領域」で起きた事故。
システムを作る場合、「逆演算」の対策が必要不可欠である。
逆演算とは、起こる可能性のある「最悪の結果」を先に設定し、それに至る道順を逆に探していく手法だ。
例えば株の売買で一度に1000億の損失が発生するとしたら、どんな原因がありうるかを考えたら、入力ミスは真っ先に思いつく原因だろう。
61万円の株を1株売却が1円で61万株売却の入力ミス。取引の制限幅があり、57万円付近で多くの取引が成立し、1000億円の損失が発生した。
大事故につながる「オオカミ少年効果」
2005年4月のJR西の福知山線の電車脱線転覆事故でも起きていた。
事故を起こした電車は、その前の伊丹駅でもオーバーランを起こしていたが、非常スイッチを握っていたはずの車掌は非常スイッチを操作しなかった。
事故直後、とっさの判断で踏切の非常ボタンを押し、事故現場を通過予定だった特急「北近畿3号」を緊急停止させて二次災害を防いだのは、
列車の車掌でもJR関係者でもなく、現場付近をたまたま通りかかった47歳の主婦だった。
1988年12月に起きたJR東中野駅の電車追突事故(死者2人、負傷者113人)は、後続電車による赤信号無視だった。
電車が赤信号を通過すると、ATS(自動列車停止装置)によって電車は自動停止するが、運転手が「確認ボタン」を押すとそれが解除され、
運転士の目視操作による運転が可能になる。過密運転と電車の遅れの回復のために、このような操作が日常茶飯事になっていたようだ。
結局、どんなに優秀な警告システムが作られていたとしても、いつも警告が鳴っているような状態が続けば、
人はそれになれてしまい、警告システムの意味はまるでなくなってしまうのだ。
・現場、現物、現人の3現を実行する
・逆演算思考で考える
・暗黙知を表出し伝達する
・「隠さない・嘘をつかない・辻褄合わせしない」の三ナイを実行する
・アウトプット型マネジメントをやろう
人の頭の中には自ら考え出したときだけ思考回路ができ、次回は確実に拘束に動くようになる
どれだけ知っているかを重視する教育をどれだけ考えられるかを重視する教育に転換する必要がある。
・失敗を生かそう
事故を防ぐための3つのポイント
1)「逆演算思考」を始めることである。
2)「失敗の知識化」である。
3)「実践」の大切さである。考える範囲が会社の中だけにいつも間にかなっている。
・自分の仕事を通して社会とどうかかわっているか。
・今回のことで何を学ぶか。直接原因だけでなく背景や組織の特性も。
・今すぐに自分は何をしなければならないか。
失敗の法則
・失敗は予測できる
・失敗情報は隠れたがる
・失敗は変わりやすい(伝わって行く内に変わる。責任追及など恐れる)
・ハインリッヒの法則
感想;
事故防止も、やるべきことをしっかりやっていることが重要だとよくわかりました。
事故が起きたら、そこから何を学び、どう今後対策を取るか、それをするかしないか。
対策をしないと同じ失敗を繰り返し、その繰返しは大失敗になる。
「逆演算思考」 どんなトラブルが起きるかを事前に考え、その対策が取られているかどうか、失敗は起きると問題になるが、
事前に防いでいるとその防いだ努力はなかなか評価されないが、問題が起きないことも評価の対象なのでしょう。