原薬メーカー(A)が記載している原薬の使用期限を越えて、製剤の製造所(B)は使えるかどうかについて考察します。
基本的な考えは以下になるのではないでしょうか。
1.承認書にリテストが記載されているかどうか
2.承認書に使用期限が記載されているかどうか
記載があるとそれに従います。
それを変更して使用することは承認書からの逸脱になります。
3.承認書には記載がない場合、それを受けて、Bは担保データを取り、担保データに基づき使用期限を設定します。
ただし、欧米は原薬/原料メーカーが付けた使用期限を越えて使用はできませんので、
欧米向けの製品に使用する原薬/原料はAが保証する期間内に使用する。
4.ガイドラインの通知や事務連絡が製造業が判断する参考情報になります。
・原薬GMPのガイドライン(平成13年11月2日、医薬発第1200号)
・原薬GMPのガイドラインに関するQ&Aについて(平成13年11月2日、事務連絡)
・安定性試験ガイドラインの改訂について(平成15年6月3日、医薬審発第0603001号)
5.製品回収で使用期限切れを使ったことで製品回収が当局から指示されています。
回収理由 平成26年 6月26日作成
本製品の原薬であるヒスタミン二塩酸塩の受入試験において、間違った有効期限を原薬に表示していたため、
有効期限を過ぎた原薬を使用して製造した製品を出荷していたことが判明しました。
本件に関するPMDAによるGMP調査において、GMP管理の不備を指摘されました。
指導内容を真摯に受け止め、不備の認められた製造番号0306〜0325の20ロットについて、自主回収を行います。
詳細は不明ですが、製造所での有効期限設定に問題があったものと思われます。
例えば、原薬/原料メーカーが設定した使用期限/品質保証期間を超えたものを、製造所の担保データで持って越えて使用できるか。
出来る場合はどのような手当てが必要か。
承認書上、原薬の有効期間に記載がない場合、
リテストの運用で行えるのかどうか。
リテスト期間については、申請段階でリテスト期間を設定して運用するようになっていますが、
製造所により、承認書に何も記載されていなくてもリテストで運用しているところもあります。
今は製造所に任されていますので、きちんと根拠データがあり、それで持ってルールを決め、
そのルールの中で運用されたらよいかと思います。
承認書に記載されていないリテストの運用は担保データにより延ばすことも可能です。
その場合は変更管理を行い延ばしてからの運用になるかと思います。
リテストにするのはどんどん延長できると考えるからです。
そのため、リテストのできる最長期間を設定することも求められています。
Q&Aなどからは、製造所の自己担保データで原薬/原料メーカーの設定した使用期限/保証期間を越えても使用できると考えますが、
PIC/Sに加入したこと、査察官が欧米的な指摘をすることなどを考えると、原薬/原料メーカーに下記のことをお願いしておくことも必要かと思います。
1)使用期限/品質保証期間を延長して貰う。
2)使用期限でなく、リテストでの保証に変更して貰う。
3)原薬/原料メーカーが設定した使用期限/品質保証期間は内側のデータであり、
それ以降の使用は使用者側で確認してしようすることとの一筆を貰う。
参考;
大阪府/健康・医療
http://www.pref.osaka.lg.jp/yakumu/gmpnote/case_g_2.html
・原薬GMPのガイドライン(平成13年11月2日、医薬発第1200号)
・原薬GMPのガイドラインに関するQ&Aについて(平成13年11月2日、事務連絡)
・安定性試験ガイドラインの改訂について(平成15年6月3日、医薬審発第0603004号)
GMP省令第21条(品質管理)
製造業者等(原薬に係る製品の製造業者等に限る。次条において同じ。)は、第11条第1項第3号の規定にかかわらず、
原薬に係る製品について、ロットごとに所定の試験検査に必要な量の2倍以上の量を参考品として、
製造された日から、次の各号に掲げる期間適切な保管条件の下で保管しなければならない。
一 有効期間に代えてリテスト日(製造された日から一定の期間を経過した製品等が、それ以降において、
引き続き所定の規格に適合しているかどうか等について、あらためて試験検査を行う必要があるものとして設定される日をいう。
以下同じ。)が設定されている製品にあっては、当該ロットの当該製造所からの出荷が完了した日から3年間
二 前号に掲げるもの以外の製品にあっては、当該製品の有効期間に1年を加算した期間
原薬GMPのガイドラインに関するQ&Aについて
問20 リテスト期間以後の原薬の使用(第11.6章)
リテスト期間を超えて保存された原薬は使用することができるか。
(答)
リテスト期間とは、原薬が定められた条件の下で保存された場合に、
その品質が規格内にとどまると想定される期間であり、当該原薬が製剤の製造に使用できる期間である。
この期間を越えて保存された原薬のロットを製剤の製造に使用する場合は、規格への適合性をリテストにより確認した後、速やかに使用すること。
なお、原薬のロットは、リテスト期間を超えても複数回リテストを行うことができ、また、使用された残りの原薬は、
次のリテストの結果、規格に適合すれば、その後の速やかな使用に供することができる。
なお、ほとんどのバイオテクノロジー応用医薬品/生物起源由来医薬品やある種の抗生物質などのように、
不安定であることが知られている原薬については、リテスト期間ではなく、有効期間を設定することが適切である。
問22 既承認品目のリテスト期間及びリテスト日について(第11.6章)
既に承認を取得している原薬であって、特にリテスト期間が承認事項に含まれていない品目については、
リテスト期間及びリテスト日について、どのように設定・管理していけばよいか。
注)現行の薬事法においては、原薬(薬局製造販売医薬品の製造に供されるものを除く)に対する承認制度は廃止されております。
(答)
安定性試験や既存の参考品等のデータに基づき、その原薬の品質が十分に安定で、求められる規格に適合すると判断される期間を評価した上で、
自社の責任においてリテスト期間及びリテスト日を設定し、管理を行うことでよい。
なお、不安定であることが知られている原薬等については、リテスト期間ではなく、有効期間を設定し、これに基づき管理を行うこと。