製品回収リスクを低減する
製品回収を避けるために今できることについて簡単に記載しました。

・製品回収の基本的な考え方

薬事法の、第1章 総 則 (目的)
第1条 この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器の品質、
有効性及び安全性の確保のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、
医療上特にその必要性が高い医薬品及び医療機器の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、
保健衛生の向上を図ることを目的とする。
→国民の生命及び健康維持、保健衛生の向上を目的としています。

(販売、製造等の禁止)
第56条 次の各号のいずれかに該当する医薬品は、販売し、授与し、
又は販売若しくは授与の目的で製造し、輸入し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。
1.日本薬局方に収められている医薬品であつて、その性状又は品質が日本薬局方で定める基準に適合しないもの
2.第14条又は第19条の2の規定による承認を受けた医薬品であつて、その成分若しくは分量(成分が不明のものにあつては、
 その本質又は製造方法)又は性状若しくは品質がその承認の内容と異なるもの
 (第14条第10項(第19条の2第5項において準用する場合を含む。)の規定に違反していないものを除く。)
3.第14条第1項又は第23条の2第1項の規定により厚生労働大臣が基準を定めて指定した医薬品であつて、
 その成分若しくは分量(成分が不明のものにあつては、その本質又は製造方法)又は性状若しくは品質がその基準に適合しないもの
4.第42条第1項の規定によりその基準が定められた医薬品であつて、
 その基準(第50条第7号及び第52条第3号に規定する基準を除く。)に適合しないもの
5.その全部又は一部が不潔な物質又は変質若しくは変敗した物質から成つている医薬品
6.異物が混入し、又は付着している医薬品
7.病原微生物その他疾病の原因となるものにより汚染され、又は汚染されているおそれがある医薬品
8.着色のみを目的として、厚生労働省令で定めるタール色素以外のタール色素が使用されている医薬品
→上記に該当している医薬品が既に販売されていると、製品回収になります。
 ただ、上記の内容では具体的にどのようなケースが製品回収なのかが曖昧であるとの指摘があり、
 製品回収に関する通知が出されました。


平成12年3月8日 医薬発第237号 医薬安全局長通知 「医薬品等の回収について」
(2)回収に当たっての基本的考え方
ア.有効性及び安全性の観点からの判断
(ア)何らかの不良により医薬品・医療機器等の安全性に問題がある場合は回収すること。
安全性に問題がない場合であっても有効'性の問題等により期待される効果 が得られない場合には回収すること。
また、製造販売業者等がその製造販売を し、製造をし、又は承認を受けた医薬品・医療機器等の不良に関して
有効性及 び安全性に問題がないと明確に説明できない場合には当該医薬品・医療機器等 を回収すること。
(イ)薬事法又は承認事項に違反する医薬品・医療機器等は回収すること。
イ.不良範囲の特定に関する判断
(ア)医薬品・医療機器等に何らかの不良が生じた場合、
当該製造販売業者等がその不良についてロット又は製品全体に及ぶものではないと明確に説明できない場合には回収すること。
具体的には以下のすべての条件を満たしている場合以外については、
ロット又は製品全体に不良が及ばないといえないものとして回収すること。
@不良品発生の原因と工程が特定できること。
A不良発生防止のための措置が適切に講じられており、GMP上の問題が認められないこと。
B保存品の品質に異常がないこと。
C品質に影響を及ぼすGQP上の問題が認められないこと。
(イ)当初はロット又は製品全体に不良が及ばないと考えられた場合であっても、 実際に複数施設において当該不良が生じた場合には、
当該不良の発生率との関 係を考慮した上で原則的に回収すること。
(ウ)大型医療機器、埋め込み型の医療機器等、ロットを構成しない医療機器の不 良について、
同種他製品に同様な不良がある場合、当該製品群をロットとみな し回収に準じた扱いを行うこと。
同様に不良が同種他製品に及ばないと明確に 説明できる場合は、「現品交換」に準じた扱いとすること。
ウ.混入した異物の種類と製品の』性質からの判断
(ア)医薬品の場合、製剤の種類(無菌製剤・非無菌製剤)及び混入した異物の種類
(ガラス片等の内在性異物、木片などの外来性異物、毛髪・虫等の生体由来 物)を勘案して判断すること。
無菌製剤については原則的に無菌性保証が確実 か否かを重要な判断基準とし、外来性異物及び生体由来物が混入した場合には 回収すること。
非無菌性製剤については、生体由来物が混入した場合には回収 すること。
(イ)医療機器のうち、デイスポーサブル製品については上記(ア)を準用すること。
→上記の記載に関して製品苦情を判断して、製品回収に該当するかを考えます。
 1.この原因が健康に影響するか。
 2.製造販売承認書の記載事項に違反しているか。
 3.ロット内の広がりがあるかどうか(この製品苦情一個だけと言えるか)
 の3つに該当していなければ製品回収の必要はないですが、広がりがないことの根拠をきちんと説明できなければなりません。


実際の製品回収の流れは東京都福祉局のHPに詳細が記されています。
医薬品・医薬部外品・化粧品の回収について

製品回収の実態
医薬品等の回収に関する情報

表示ミスによる回収、毛髪・虫による回収、溶出試験の経年で規格不適合による回収が多いです。
最近の特徴では、GQP施行後に、製造場所・製造方法の変更が正しく手続きされていなかったための回収、
原薬の製造所のGMP適合性調査で適切でないと判断されたための回収が新たに出てきています。


製品回収を避ける施策
1.変更管理を確実に行う
2.原料、直接容器の変更時には安定性試験を行い、特に溶出試験においては、加速試験と長期安定性試験の両面から考察する
3.虫、毛髪などは広がりがないことを製造ロット毎の確認、不良品(系外排出品)の確認・保管により担保する
4.原薬製造所のGMP査察は、GMPシステムだけでなくリスク観点からも実施する
5.表示資材については、製造ラインの中で保証する仕組みを導入する
6.表示資材の校閲・校了の仕組みを確実にする
7.逸脱時には常に経年での変化についても考察する
8.PMDAの製品回収事例を毎日確認し、該当する項目に品質保証の脆弱な面がないか考察し、懸念があれば調査・改善を行う

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