グラスファイバー混入改善
不溶性異物の削減はなかなか難しい。原因がはっきりわかる場合が少ない。
このケースは原因がわかり、対策を行い改善した事例である。
一般的な改善の参考になるかと思い掲載した。

1.グラスファイバー混入発見
 ある製造所の凍結乾燥製剤に、棒状の繊維が何個か見つかった。それを取り出し、
X線マイクロアナライザーで評価したところ、ガラス成分だった。つまりグラスファイバー(GF)。
そこで、その製品に水を充填して各段階からサンプリングして評価した。
・ガラス瓶の超音波&ジェット洗浄後のバイアル瓶にはふくまれていなかった。
・薬液を充填したバイアル瓶には含まれていなかった。
・凍結乾燥機のチャンバーに入れた段階のバイアル瓶には含まれていなかった。
・凍結乾燥後のチャンバーから取り出したバイアル瓶には、GF(棒状の繊維)がたくさん見つかった。

2.原因究明T(仮説設定&検証)
凍結乾燥機で混入したとの判断で、凍結乾燥機に使われている素材をいろいろ検証したが、
同じ成分のものはなく、また、凍結乾燥機からそのような異物がでるところがなった。
 洗浄前のガラス瓶には多くの繊維もあり、類似の繊維もあった。
超音波洗浄&ジェット洗浄では落ちなかったのかの疑問が湧いた。
水が凍る時の体膨張率でガラス内面にくっ付いている異物を剥がしたのではないかと仮説を立てた。
ガラス瓶を試験用の超音波洗浄でよく洗浄した後、水を入れ冷凍庫で凍らせた後、確認したところ、GFがたくさん見つかった。
GFは超音波洗浄&ジェット洗浄では落ちずに、凍結乾燥後に剥がれ不溶性異物に<なっていることがわかった。

2.原因究明U(混入箇所追求)
 ガラス瓶を成形している硝子会社で同じGFを使っていないか調査したところ、
成形後に冷却する徐冷炉の断熱材に同じGFが使われていた。最近、レンガからGFの断熱材に変更したとのことであった。
そのGFの性質を調べると、軟化温度が1,300℃であった。ちょうど、ガラス管(成形前)を1,500℃前後で加工しており、
徐冷炉にはいる時が、1,300℃を上回っていた。そのために、ガラス瓶の表面がまだ軟化している状態の時に、
舞っていた軟化点が1,300℃のGFも表面が少し熔けていたため、お互いが熔けた状態で融着した。
この融着はかなりの力であり、超音波洗浄やジェット洗浄では剥がすことができなかった。
成形工程の徐冷炉の断熱材が原因であることがわかった。

3.対策とその確認
徐冷炉のGFを軟化点の高いGFに変更したところ、凍結乾燥後のGFは無くなった。
ガラス瓶を受け入れ時に全ロットについて、ガラス瓶に融着しているかを確認しした。
徐冷炉の材質変更により、融着しているGFは減りましたが、暫くすると増えて来た。
そこで、成形の現場に行き確認しました。金属にガラスとの接触を和らげるために断熱テープを使っていた。
その断熱テープを持ち帰り分析したところ、同じ材質のGFだった。
断熱テープの軟化点も同じく低いものだった。それを別のものに切り替えたところ、GFの融着は完全に無くなった。

4.異物対策で重要なこと
 ・評価方法を確立する。
   客観性、再現性のある官能検査を確立する。観察者のトレーニング、評価を行う。
 ・問題ある異物を取り出しその分析をする。
   ろ過する時に異物を見失うことがあるので、異物を捕集する場合は、
   実態顕微鏡で製品の中の異物を外から見て、大きさと形状を記録する。ろ過をして、同じ異物を見つける。
・現場を確認する。
・PDCAで結果を評価する。

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