勝田 茅生 ロゴセラピー入門ゼミナールより 「ケロイドの顔」 "人生にYesと言う”

ゼミナールに参加しました。そのテキストにとてもよいケースが紹介されていました。
ロゴセラピーはヴィクトル・フランクルが始めたセラピーです。
オーストラリアの精神科医でナチスの強制収容所での体験記「夜と霧」が世界でよく読まれている書物の10冊に取り上げられています。
それでも人生にYesと言う 
ヴィクトル・フランクルはウィーンの精神科医でしたが、ナチスの強制収容所で死の隣で生きる希望を失わなわずに耐え忍びました。
収容所でチフスにも感染しましたが、ロゴセラピーを残さないといけないとの執念でチフスに立ち向かいました。
ロゴセラピーはヴィクトル・フランクルが自ら実践し、そのロゴセラピーの効果を自ら確認しました。
ロゴセラピーは、精神 ⇔ 心(感情/気持ち) + 身体 と、心と身体の上位に精神があると考えます。
心と身体が病んでいても精神が病んでいなければ、その人は健全な状態にいて生きる目的を持っています。
自分から人生の意味を見出すと言うより、”人生”が自分に意味を尋ねて来ると考えます。
どんな過酷な状況の中でも意味/価値を見出すことができると説明しています。
価値には、@創造価値、A体験価値、B態度価値があります。

このケースでは、この女性は自動車事故で生じた怪我で顔にケロイドが残りました。
夫は間もなくこの人から離れて行きました。生きて行くのが嫌になったとのことでした。

ある若い女性がどうして良いかわからずに、私のもとへ助けにやって来た。
『私のことなど好きになる人はいないのです。もう生きているのが嫌になりました。』というのは、この女性の顔は自動車事故で生じた怪我のために歪み、
その後、夫は間もなくこの人から離れて行ったからだった。この女性と私は、これから生きて行くために必要な新しい人生観について真剣に話し合った。

回を重ねる内に、この女性の口元に微笑が初めて浮かぶようになった。
それはこの人が新しい考え方を受け容れて、それを信じ始めるきざしだったのだ。
というのも、その微笑みは私がちょうど次のような話をしていた時から始まったからだ。

『運命の打撃であなたは外見の美しさを失ってしまったわけですが、それは言ってみれば非常に正確な測定器械を手に入れたようなものです。
誰かと知り合いになった時に、この人が本当の友だちになるだけの心の豊かさを持っている人か、
あるいは表面的な事柄や外観に捉われる人か、それを<テスト>することができるからです。
それはちょうど、貴重な金属を探すためのガイガー機のようなもので、あなたの場合にはそれは貴重な人間を探すためのものなのです。
あなたのご主人はそのテストに合格できなかったようです。それはあなたのせいではありません。ご主人の間違った態度のせいなのです。
この事故がなければ、そのことをこれほどはっきりと知ることができなかったでしょう。
今あなたが新しいパートナーを探す時に、他の人よりも多少長い時間がかかるかもしれません、
けれども、あなたは他の人たちのように虚偽の付き合いのために時間を浪費しないですむのです。
他の人たちは、自分がありのままで愛されているかどうかを調べる道具を持っていないので、無駄な付き合いに時間を取られていることが多いのです。
けれどもあなたは、本物を探り当てる可能性を持っているのです。あなたを本当に心から好きになる人は、外観に捉われないでしょう。
むしろその逆です。その人はあなたの勇気を尊敬しあなたが苦しまれてきたが故に、あなたを大切に守ろうとするでしょう。
いつか良いパートナーが見つかるとの信念を捨てないでください。本当に善良で真実尊い人間はごくまれです。
けれどもたとえあなたが映画スターのような美貌を持っていたとしても、それだからと言って、より多くの優れた人格者が近寄ってくるわけではないのです。
あなたの苦しみを通して、あなたは周囲の人間の中で<小麦の粒ともみ殻をより分ける>ことができるようになったのです。
そしてそれは、何十年かすればどれも枯れてゆく平均的な顔よりもずっと貴重なのです。』

先に述べたように、患者の態度のわずかな変化に現れた微笑は、その人がこれから勇気を持って生きるための最初の芽だったのだ。
この時から状態は良好になり、数か月後には他の若い人たちと同じようにピクニックに出かけたり、仲間と一緒に行動できるようになった。」


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