GQP体制の確立と効率よい運用


GQP体制の確立と効率よい運用

GQP省令をどのように仕組みにするかで、いろいろな選択肢があります。
東京都のホーム・ページにGQPのチェックシートも掲載されており、それをクリアーしていれば問題ありません。
限られたリソースで行うとすることと、十分な対応をすることは相反することでもありますが、そこに工夫の余地があります。

GQP省令の上位には薬事法があります。薬事法は“国民の健康維持と向上”を目的としています。
その精神に基づいて、GQP省令の仕組みも判断することだと思います。

Gで始まるシリーズは、第三者が文書と記録で確認できる必要があります。
どんなに立派な品質保証の仕組みを行い、よい品質のものを造り、苦情がまったくなくお客様が大満足でも、
定められた書類と記録がないと適合せずに、承認または許可を取り消されてしまいます。
いかに効率よく文書と記録を第三者にわかりやすく残すかも大きな作業になります。

各社の判断が分かれているところをいくつか紹介します。

1)市場出荷を(最終)製造所で行うか、製造販売業者で行うか。
  製造所では製造所出荷を行っています。市場出荷を製造販売業者で行うと、作業が二度になります。
  製造所に市場出荷を委託するのが効率よくなります。ただ、GQPは製造販売業者が全ての責任を負いますので、
  委託した場合はいかに市場出荷を製造販売業者が管理するかの仕組みを導入します。
  例えば、製造所での逸脱のSOPを確認し、逸脱した時は必ず製造所から連絡を受けるようにします。
  あるいは品質に影響が疑われる可能性がある場合は連絡を受けるが、それ以外は毎月の定期報告にすることもできます。

2)委託先の評価、査察の頻度をどうするか。
  委託先の評価は製造所の逸脱やOOS、製品苦情、変更管理などにより、毎年年次レビューとして行うことが適切です。
  その時に、製造所のGMP適合状況を現地の査察をすることになりますが、
  その査察の頻度をどうするかが当局の希望とリソースから迷うところです。
  現地の査察は多くの企業が3〜5年に一度とSOPに規定されているのではないでしょうか。
  5年と長めの場合は、途中にアンケート調査で実査の代用にしているところも多いかと思います。
  また、問題のある製造所は頻度を多くするとか工夫をします。
  当局は長くても3年を希望されているかと思いますので、それに沿って、
  アンケートなどで、委託先あるいは原薬の製造所を確認していることを証明することが必要になります。

3)品質保証責任者(品責)がどこまで実際に行うか
  GQPは製造販売業者に最終責任を持たせています。品質に関しては品責に多くの業務を与えています。
  品責は品質保証組織の長を兼ねているケースが多いです。
  品責がその実務を行っていると、その会社の品質保証全体の業務に支障をきたす場合が出てきます。
  そこで、担当者を置いて実務にあたらせます。その実務結果を品責が定期的に確認することが必要になります。
  品責が確認した記録を残します。問題があれば品責が指示し、その指示した対応の結果を再度品責に戻し、
  品責が確認した記録が必要になります。このレベルをどこに置くかによって、実務作業量が左右されます。

  4)総括製造販売責任者(総括)
  総括への品責からの報告並びに総括が品質に関して行う業務もあります。
  総括が日々のGQPの品質の業務に個々に対応することは、現実的に難しく、かつそれが品質保証に向上するとは思われません。
  総括、品責、担当者、委託先での役割を明確にして、各レベルで処理し定期的に報告することと、
  その都度報告することをSOPに規定して運用することが効率性の向上に繋がります。
  そして、それが各レベルで遵守されているかを定期的に確認することになります。その確認も記録として残します。

  5)製品苦情対応
  多くの会社では、製造所からの製品苦情対応の報告書をそのままお客様への回答書とせずに、
  再度、専任の組織の担当者がお客様への回答書を作成しています。
  製造販売業者(製品苦情対応部署)⇔委託先品質部署(または仕入品先)⇔製造所
  3回回答書/調査報告書を書いていることになります。
  効率化を図るには、お客様と製造所の距離をできるだけ短くすることです。
  また短くすることにより、お客様の声が届きやすくなります。
  製造所での回答書ではお客様を怒らせるあるいは、お客様対応に慣れていないなどの懸念もあります。
  本社のお客様部署の人も最初は素人です。間の間接部署はできるだけ省く、
  省くことで業務効率化だけでなく、製品苦情品の送付、回答書の送付の短縮、お客様の声もよりダイレクトに届きます。
  ITツールがあることから、製造所で受け取った製品苦情品の写真、調査報告書、お客様への回答書も同時に共有することができます。

6)変更管理対応
  製造所での変更管理を全て製造販売業者に上げていると、業務の負荷が大きくなります。
  製造所で対応すること、製造販売業者で対応することはSOPで規定してレベル分けをしておくことが必要です。
  製造販売業者に上げて了承を得ることは、以下の3点です。
   @品質に影響する可能性があると思われること
   A製造販売承認書記載事項と異なり、一変申請、軽微変更届が必要と思われること
   B委託先との取り決め事項が変わる項目
  上記以外は製造所で変更管理を行い、製造販売業者は定期的なGMP適合状況の確認の時に、
  変更管理が正しく運用されていること、製造販売業者に提案すべきことに抜けがないかを確認します。

7)製造所のGMP適合状況の確認(査察)
  医薬品は製造所で製造されます。その製造所を見ること、その製造に携わっている人を
  知ること、そして、製造販売業者の品質保証担当者を相手側に知って貰うことが重要です。
  そのため、現場を見ることはもっとも重要な品質保証です。品質保証では3ゲン、5ゲンが大切と言われます。
  品質保証はこれに始まり、これに終わると言っても過言ではありません。
  機会をみては行くこと、そしてできるだけ記録に残すことです。
  この記録は当局のGQP査察時に、製造所の品質保証の確認をこのようにしているとのよい記録になります。
  また、訪問したついでに、出荷、逸脱、変更記録、教育訓練記録、GMP自己点検記録、製品苦情のログなども見せて貰い、
  それも合わせて記録を作成されると委託先の定期査察の代用にもなります。

  8)文書の作成&改訂
  文書の改訂、記録は当局の査察でも重要な確認箇所です。
  軽微変更がなされているのに品質保証書が反映されていない。新製品がでたのにそれの品質保証書がない。
  委託先との取り決め事項が締結されていないなどがあると当局の査察管の印象を悪くするだけでなく、
  品質保証ができていないとのことで改善がなされるまで製造販売業の更新がされません。
  先ずはタイムリーに作成すること、中身の充実はその後に行うことかと思います。

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