祈りの品質へようこそ
Q & A
いただいたご質問の中で、一般化して公開させていただいた返答を掲載します。
Q2;
PIC/SのGMPガイドラインに関する質問
【質問1】
GMP ANNEX1 47.に"sliding doors may be undesirable"とあります。
無菌製造区域グレードCエリアにおいて、秤量室、調製室等はコンタミの可能性から開き戸にする必要があるが、
原材料保管室、器具保管室はコンタミ発生の可能性が際めて低いことから、引き戸でもよいのではないかと考えますが。
⇒清掃ができる構造を言っています。引き戸は溝があるためにどうしても埃が溜まりやすくかつ清掃が難しいです。
査察官の判断になるかと思います。ただ、ANNEX1無菌注射剤についてです。原料保管室は固形剤でも共通です。
器具保管室はその器具がどのような器具によるかによって、査察官の判断が異なるかと思われます。
優先順位を付けて対応されるのがよいかと思います。原料保管室、器具保管室(器具の使用用途によって異なる)
では指摘されても軽度の指摘で留まるかと思います。ただ、その場合であっても、きちんと清掃を行うこと、
埃が溜まっていないかの確認をするなどの歯止めはあった方がよいかと思います。
【質問2】
PIC/S GMPガイドラインに関する質問の2つ目、ANNEX15.38のクリーンホールディングタイムについて。
ANNEX15.38ではクリーンホールディングタイムとダーティーホールディングタイムの設定を規定しています。
ダーティ―ホールディングタイムは、洗浄バリデーションで決めていけますが、クリーンホールディングタイムは、
どのように評価して洗浄から再使用までの限度を設定したらよいでしょうか。
⇒どちらも最悪のケース(設定した期間)でバリデーションをします。
ダーティホールドタイムを長くすると製品によっては洗浄が難しくなります。
クリーンホールドタイムは、どのように保管するかを定め、それで最長どこまで保管してそのバリデーションを行います。
埃は隙間からも入りますので、使用前に簡易洗浄を設けているところもあります。
製造のサイクルにより再洗浄をしなくてもよく、かつ長くならない期間の設定になります。
一般には1〜3か月の期間での設定になるかと思います。
ダーティホールド期間は、多くの場合使用後直ぐに洗浄しますが、
場合によっては、ダーティホールドとクリーンホールドタイムを活用して、根拠のある洗浄で効率よくしている場合もあります。
工場の実際;
クリーンホールドタイムは洗浄して保管された機器について付着菌を測定して決めていますが、一般的には1ヶ月で、最長でも3ヶ月のようです。
【質問3】
3つ目の質問はサンプリング数についてです。これはPIC/S GMPにかぎりませんが。
入荷原料の受入試験の際のサンプリング数(容器数)ですが、一時期でた"√n+1"の根拠はあるのでしょうか。
また、原料の種類、容器数とも多い中で、合理的な試験を実施したいのですが、
原料メーカーよりロット内均質性のバリデーションデータを提供いただき、
実地に製造方法を確認してロット内均質性について問題ないと判断した場合は、1容器からのサンプリングで評価できるのではないかと考えています。
本件、社内ルールを設定しても、やはり問題ありますでしょうか。
⇒√n+1"の根拠は、具体的にはありませんが、統計的な根拠を持たせる意味で使われています。
確認試験(ガイドラインでは同一性)と受け入れ試験に分けて考えるのが良いかと思います。
確認試験については、全ロットからのサンプリングが求められています。
ただ、PIC/SGMPでは根拠があればそれを統計的な数にすることもできると解釈できるかと思います。
ただ、FDAでは原薬については全梱包からの確認試験が必要なようです。
受け入れ試験については、全梱包からサンプリングしているならそれを混合してサンプルとすることで試験のn数を減らすことも可能です。
実地に原料メーカーの確認には間違いない品質保証の仕組み、SOPなど、流通段階でのいたずら防止まで含めた封印と流通業者の確認と契約、
そして実績などにより、サンプリング数を減らすことは可能です。
工場の実際;
FDAは以前√n+1で良かったのですが最近は統計学的に決めるべきと言っています。
√n+1で行ってましたが、根拠がないことからその運用は止め、現在はISO(確かミリタリースタンダードと同じです。
EUは以前より全梱の確認試験を要求しており、これはEU圏にマフィアがいるからとの説もあります。
最初は全梱の確認試験、縮分して一つにして他の項目の試験を行います。
サンプリングの n数はベンダー査察の結果、実績、ベンダーの製造サイトの状況(工場によっては一品目しか製造しておらず、
コンタミの心配がいらない場合もある)に応じてISOに準じ削減しています。原薬と添加剤で運用を変えていません。
製剤の海外送り(日本で製造して海外に製剤を輸出)の場合
1.確認試験(IR)は全梱行う。
2.それ以外の確認試験は縮分して行う。
3.確認試験以外の項目はISOに従ったn数とする。
4.原薬と添加剤は同じ運用である。
英国の製造所はリスクアセスメント(原薬なのか添加剤なのか、ベンダー監査の状況はどうかなど)を行い、n数を決めています。
今回、いただいたご質問ははっきりと規定されていません。企業での判断になります。その判断は品質を確保しているとの根拠を示すことです。
この根拠の強さにより、当局の査察官の判断も左右されます。また、仮に指摘されてもクリティカルになるのかならないのかが分かれます。
PIC/S対応は業界でも対応を協議しているかと思います。今後具体的な事例が紹介されるかと思います。PIC/S加入が今年の6月との情報も出ています。
既にPIC/Sを反映したGMP省令は出されており、既に適応されています。ご存知のようにガイドラインは強制ではなく指針扱いですが、
査察官がこのガイドラインを参考に指摘することもあると説明されているかと思います。
PIC/Sガイドライン対応の計画書を作成し、優先順位を付けて、できるところから行っていれば当座は問題ないかと考えます。
その後、事例の発表とかでてきますので、計画書を適宜見直しするのも選択肢かと思います。
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