「カウンセリングの技法」 諸富祥彦著 "カウンセリングのプロセスと具体的な進め方”

カウンセリングの核心
相談に来た人が、人生のさまざまな問題に直面し、悩み苦しみ、どうすればいいか考えあぐねて、みずからのこころの声に耳を傾けていく。
それを通して、多くの気付きや学びを得て、人を間としての成長(自己成長)をとげていく、この悩み苦しみ、
人生の暗い闇の中で、自分自身を見つめていくプロセスに寄り添っていくことに、カウンセリングの核心、醍醐味が存在する。

カウンセラーになるためには
1)本気で生きること
2)本気で生きた自分を深く見つめること

ソリューション・フォーカスト・アプローチ
1)もしうまくいっているなら、それを直そうとするな
2)もし一度うまくいったのなら、またそれをせよ
3)もしうまくいかないなら、何か違ったことをせよ

コンステレーション(布置)
その人の人生に、今、何が起きているのか、どのような人生の出来事の流れ、めぐりあわせ(布置)の中に,
その人が置かれているか、を見ていこうとする姿勢のことです。
少し大げさに言えば、そうした出来事を通して、その人の<運命>がどのように姿を現し展開しているのか、を見て取っていこうとするのです。 河合隼雄
「私は、ともかく、クライアントの方のコンステレーションを見て行くような姿勢をうかがうこと、それだけを全力でやっています」

「深い、ほんものの傾聴」ができるカウンセラーは、
自分のこころを無にして、クライアントのこころのひだをていねいに聴いていくときに、
自分自身のこころの深いところで発せられてくるさまざまな声や動きにもていねいに、繊細に耳を澄ませていきます。
クライアントのこことの内側から発せられてくる声に虚心に耳を傾けながら、同時に、自分自身の内側に深くていねいにふれながらふれながらしつつ、
自分の内側から発せられてくる声にもていねいに意識を向けて行くのです。

カウンセリングの初期段階の課題は、「関係づくり」にある。
クライアントが「ここではどんなことも安心して話すことができるし、自分の言わんとしていることを、
その繊細なところまで、理解しようとしてくれる」と感じられる「関係づくり」
クライアントが言わんとしていることを、クライアントの内側の視点に立ってありあちと想像し、
その繊細なところまで正確に理解すること、その理解をていねいに伝えていくこと。

伝え返し(ロジャーズの晩年)
「セラピストとしての私の見解を言えば、私は<感情を伝え返そう>とはしていません。
クライアントの内的世界についての私の理解が正しいかどうかを確かめようとしているのです。
クライアントがそれを今体験している通りにそれを見ているか、確かめようとしているのです。
私の応答には、次のような無言の問いが含まれています。
<あなたの中でそれはこんなふうになっていますか> 
<私は、あなたが今体験している個人的な意味の色合いとか肌合いとか味わいを、ちゃんとキャッチできていますか> 
<もしそうできていなかったら、私は自分の知覚をあなたのそれに一致させたいのです>。
その一方、クライアントの側から見れば、私たちはクライアントが現在体験しつつあることの鏡を提供しているわけです。
その鏡に映し出され、別の人の目を通して見られた感情や個人的意味は、よりシャープになっていくようです。
だから私は、<感情の伝え返し>ではなく、<理解の確かめ>とか<受け取りのチェック>という言葉を使うことを提案します。
こういった言葉のほうが、より正確であると思えるからです。セラピストのトレーニングにも有益です。
<伝え返そう>とするのに比べると、相手の内的世界についての自分の理解や受け取りを確かめようとすることのほうが、
応答したり質問したりする際の健全な動機となるように思います」

カウンセラーの「こころの枠」
・カウンセラーの安定感 「こころの振れ幅」が小さいこと。低く安定して重心を保つこと
・カウンセラーのとらわれのなさ 「自由なこころの動き」を保証する

ユングの言葉
「心理療法の最高の目的は患者をありえない幸福状態に移そうとすることではなく、彼に苦しみに耐えられる強さと哲学的忍耐を可能にさせることである」

カウンセリングの基本形(三つの段階を踏む)
1)関係形成期(ラポール形成/心と心のつながりをつくる段階)
2)自己探索期(自分を深く見つめる段階)
3)行動計画期(実際の行動を計画する段階)

傾聴における三つの基本姿勢
1)余計なことを言わない
2)解決しようとするな。わかろうとせよ。
3)善悪を問わない。価値評価をしない

カウンセリングの種類
1)治療・解決的なカウンセリング
2)予防的カウンセリング
3)成長支援的カウンセリング

リレーションをつくるには
1)「うなづき・あいづち」
2)「伝え返し」(リフレクション)
3)「こころのつぶやく」(感情の自己開示)

カウンセリングの到達点
悩みが解決することよりも、その悩みに対応して行ける力を備えることを支援する。
クライエントの中にクライエントを作る。つまり、自分が自分のカウンセラーになれる。

感想;
カウンセリングにはいろいろな手法があります。
著者はいろいろな方法を使いながらカウンセリングを行う「折衷派」として、
さまざまな処方の良さを生かしながら行われている方です。
自分をカウンセリングすることができると生きやすくなるように思いました。

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