苦手なことをやってみる/音痴でも歌いたい 時間をかける

音痴なので人前で歌うことはしませんでした。
ところが、どうしても歌わせられることがありました。
会社に入って新人で歌わせられました。覚えている歌がなかったの“炭坑節? 月が出た出た・・・”を歌いました。
会社で忘年会などがあっても頑張って拒否していました。
ある時、どうしても拒否できなくて歌いだしたら、途中からマイクを奪われてしまいました。

音痴はもう直らないと諦めていました。
38歳の時に胃がんになり、胃を2/3切除しました。
手術した直ぐには気持ちは変わらなかったのですが、少しずつ事件の経過で「時間は限られている」ということを実感して来ました。
つまり、やりたいことは将来できるとの保証はないとのことでした。

前からやりたいと思っていたこと、新しいこと、苦手なことをやってみようと思いました。
苦手なことの一つが歌でした。
そんな時、社会保険センターが主催する講習会のカラオケに、「ボイストレーニングの基礎から始めます」と案内に目が留まりました。
時々、音痴を直す教室もあることから、音痴など歌に自信がない人が集まるコースかなと思いました。
ところが、カラオケの得意な人がもう一度基礎からやって行こうと思う方がほとんどでした。
私のように音痴を直してくれるコースだと思った人は私以外にもう1人いらっしゃいました。
一人でないということはとっても心強かったです。それと、知らない人ばかりなので、人前で恥をかいてもよい。
人との比較でなく、自分の今と未来との比較だと思えるようになっていました。
2回/月×2時間でした。30分発声練習します。50分ほど、課題曲の練習を行います。
残りの40分で、一人ずつ前で歌い、先生からアドバイスを貰います。
皆の前で歌うにはその前にCDで何度も聞きました。

半月ほど習った時に職場の派遣さんの歓迎会がありました。二次会はカラオケでした。
その派遣さんは私のグループの人だったので、行きたくなかったのですが仕方なしに行きました。
何度か歌を勧められましたが断っていました。ふとカラオケ教室で習って皆の前で歌っていたので、どれだけ上達したかを確認してみたくなりました。
カラオケで歌う初めてでした。少し歌いだすと、私に熱心に勧めていた人の顔の表情が曇りました。
いかにも勧めたことを後悔している印象のように感じました。だったら勧めるな!と思いましたが、歌ったのは私ですから。
時々、カラオケで歌わなくて、さんざん勧められて歌うと上手な人がいます。私に言わせるともったいぶらずに最初から歌え!と思います。

その後、ある人がカラオケボックスで練習すればよいと教えてくれました。
それまではカラオケは一人で行くところではないと思っていました。行ってみると結構一人で来ている人がいました。
当時は自分が歌っていても、音程が合っているか外れているかがわかりませんでした。
幸い、当時採点機があり点数がでました。カラオケで練習して点数を記録し、家でCDを何度も聞く、そしてまたカラオケで点数を確認することをしました。
点数が上がるということは音程も良くなっていることになります。
発声練習のドレミファソラシドに合わせて声を出しましたが、音程が合っているかどうかわかりません。

1年ほどやっていると徐々に、自分が歌っていて外れているのが少しずつわかって来ました。
つまりどこが外れているかがわかってきたのです。それと採点機も機能が充実して来て、外れていると表示されるようになってきました。
今の採点機のように上に外れているか下に外れているかまではわかりませんが。
よく、歌う前にキーを上げてとか下げてとか言う人がいて、何をかっこつけているのだろうと思っていました。
ところがキーの高さで歌いやすさが違うことがわかって来ました。
自分の外れているところがわかると歌いながら調整することも少しずつ出来るようになりました。
カラオケ教室や一人カラオケで延べ500時間ほど使ったでしょうか。そこそこましに歌える歌も見つかって来ました。
何より、人前で歌える自信とうか、度胸だけはつきました。
カラオケで体験したことは、苦手なことは自分が時間をかけていないことだと実感しました。
時間をかけるとある程度までは行くことも体験しました。

それまで飲み会でカラオケ装置があると、重い気分になっていました。
今は平気です。カラオケに誘われると必ず断っていましたが、カラオケに行くとの選択肢も取れるようになりました。
何より音痴だが歌うことは好きだったということにも気が付きました。
声を出していると気分転換になります。歌っている時は他のことは全て忘れています。嫌なカラオケが楽しみになりました。

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