本の紹介&感想

「流れる星は生きている」  藤原てい著

「流れる星は生きている」 藤原てい著
満州 終戦になり新京から日本への帰国の記録である。
長男の正広(6歳)、正彦(3歳)、咲子(1か月)。夫は残り、小さな子どもを抱えての脱出。
北朝鮮から先の鉄道が止まり北朝鮮で1年近く足止めされ、生死の境をさまよいながらの脱出であった。
酷寒の北朝鮮で充分な衣類や暖房もないところでひと冬過ごした。
食べるものもなく、栄養失調にもなり、下痢、感染症など。
長男がジフテリアにもなり、血清が手に入らない中、母親が必死に駆け回って血清を求めた。
血清のお金もなかった。そんな絶望の中で手を差し伸べてくれる日本人医師。
夫(作家の新田次郎)は1年後帰国。息子の藤原正彦(数学学者)。家族全員が生きて帰国できた。

改めて満州にいた当時の人々がいかに生死を彷徨いながら帰国したかの一端を知った。
多くの人が亡くなっている。
引揚者が死と一緒の帰国の中、自分も大変なのに手を差し伸べる人、余裕があっても手助けしない人。
この違いはどこから生まれてくるのだろうか?

手助けしなかった人を責めることはできない。
五木寛之氏が、「帰国するとは他人を蹴落としてわが身を守ることだった。
そうしないと自分の命さえ守れない過酷な状況だった」と書かれていた。
皆生きるために必死だった。

義父もシベリアに数年抑留された。軍隊は我先に逃げ民間人は取り残されてしまったと聞かされた。
抑留生活の中でソ連は共産化思想を行った。協力する人には良い環境を、また協力する人は早く帰国できると伝えたそうである(本より)。

絶望的な状況でも人としてどう対処するか。難しい課題である

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