本の紹介&感想

「史上最大の決断 ノルマンディー上陸作戦を成功に導いた賢慮のリーダーシップ」 野中郁次郎 荻野進介共著著

「史上最大の決断 ノルマンディー上陸作戦を成功に導いた賢慮のリーダーシップ」野中郁次郎 荻野進介共著

2006年頃から野中郁次郎がフロネシスの重要性を提唱し続けている。科学的知識と実践的知識を融合して、創造的な行動をする能力を指している。
「個別具体的な場面のなかで、全体の善のために、意思決定し行動すべき最善の振る舞い方を見出す能力」である。
深い倫理観、歴史観、社会観、政治観、美的感覚に基づく判断・行動である。そのため個人と社会の成熟が必要とされている。

野中郁次郎は、2011-2012年に福島原発事故独立検証委員会委員として活動したときに、首相官邸と東京電力の福島原発事故への対応を検証し、
「失敗の本質」で28年前に指摘した日本軍の失敗の原因である「フロネシスの欠如」を目の当たりにしたとしている。

1.イデオロギーに縛られ、現実的な対処ができなかった。
2.同質的メンバーで独善的に対処した。
3.官僚制を生かす統合・統制能力の欠如。
ウィキペディアからも一部引用

野中は、「フロネティック・リーダー」が日本を再生させると考えている。彼らの持つべき能力として、野中は次の6点を挙げる。
フロネシス(phronesis)
とは、古代ギリシア哲学、特にアリストテレスによる哲学的な概念であり、「実践的な知」を示す。

1.善い目的を作る能力
 アリストテレス「あらゆる行為や選択はすべて何らかの善を希求する」
2.場をタイムリーに作る能力
 部分と全体を常に往還し、名詞形ではなく、動詞形で物事を捉えるプロセス
 現実をうまく捉えるには、個別具体の微細な経験を総合するプロセスが不可欠となる
3.ありのままの現実を直観する能力
 人々をやる気にさせる場づくりの能力。場づくりの基礎となる人事。人は非言語的な暗黙知も、身体的な共振、共感、共鳴によって察知する。
4.直観の本質を物語る能力
 物語でわかりやすく説明する能力。重要な演説を行うには細心の注意を払う。
5.物語を実現する政治力
 合法力(組織から与えられた力)
 報償力(報償を与える力)
 強制力(処罰できる力)
 専門力(専門的知識や技術に由来する力)
 親和力(お互いの一体感に由来する力)
 情報力(情報の量や質に由来する力)
6.実践知を組織化する
 一人で抱え込まずに各組織にいる優れた人材を活用する。

凡人が非凡化するプロセス
1.職人道を真摯に追求、実践する
2.複数のすぐれたメンターに恵まれる
3.類まれな文脈力を身に付ける 歴史的構想力と文脈力
 ソ連の最高指導者フルシチョフをアメリカ1959年9月大統領の山荘があるキャンプ・デーピッドで行われた最初の会談は盛り上がらなかった。
 アイゼンハワーは会談中、フルシチョフにヒューマニストの側面があることを察知し、
 フルシチョフは近くにある南北戦争の決戦地ゲディスバーグを見たいはずだと思い、誘ったら乗って来た。
 近くに大統領の農場の家近くに息子夫婦の家があり、4人の子どもと住んでいた。
 「30分後にフルシチョフを連れて行くので子どもたちに身づくろいして農場の玄関でフルシチョフに挨拶させないと連絡した。
 フルシチョフは大統領の質素な家で彼の息子夫婦と可愛い孫に会い、心を動かされたようだ。
 フルシチョフはその時間を楽しんだようだ。それまでのフルシチョフと打って変わり、ソフトになりその後の話し合いが進んだ。
 アイゼンハワーは自分の家族とその生活ぶりを見せることで平和の大切さを訴えようとした。
 フルシチョフの雰囲気が変わったのは、アメリカのリーダーの息子や孫が、祖国にいる自分の息子や孫に重なって見えたのではないだろうか。
 フルシチョフが「このたびの訪米は自分の期待を超えるものであり、とくにアメリカ国民と政府指導者、
 さらにはアイゼンハワー大統領と彼の家族が示した友好的な感情にそれを感じている。
 大統領の人柄にまったく圧倒された、大統領がもう一期その職務を務めることができるなら、われわれの問題は解決されると確信している」 
4.アメリカ陸軍という伸び盛りの組織に属していたこと

  凡人を非凡に変える「性格スキル」
・真面目にしごとに取り組む
・他人とうまくやる
・前向きに物事に取り組む
・さぼらない

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